2010/12/24

実は仏さまです

         



          
しばらく更新ができずにいましたが、

可睡斎の東司(おトイレ)について

引きつづき紹介させていただきます。



さて、東司に入り正面にお祀りしてあります

お像を『宇烏瑟沙摩明王(うすさまみょうおう)』

とお呼びします。






































烏蒭沙摩明王は、古代インド神話において

元の名をアグニと呼ばれた炎の神であり、

「この世の一切の汚れを焼き尽くす」功徳を持ち、



仏教にとりいれられた後も

「烈火で不浄を清浄とする」力を持つことから、



心の浄化はもとより日々の生活のあらゆる

現実的な不浄を浄める功徳があるといわれます。



人間界と仏の世界を隔てる天界の

火生三昧」(かしょうざんまい)と呼ばれる

炎の世界に住むといわれ、



人間界の煩悩が仏の世界へ波及しないよう

聖なる炎によって煩悩や欲望を焼き尽くす反面、

仏の教えを素直に信じない民衆を



何としても救わんとする慈悲の怒りを以て

人々を目覚めさせようとする明王であります。



また、本来清浄なる自己に目覚めさせる徳をもつといわれ、

禅宗では東司の仏様として祀られています。




この可睡斎に祀られている烏蒭沙摩明王は、

高村晴雲の一代傑作であり、

日本一大きなご尊像(三メートル)が安置され


宇鳥蒭沙摩明王は、腕が四本で、左手は天を指し、

髑髏を持ち、右手は、宝棒と独鈷を持っています。






































顔は、怒った形の憤怒形で、右足で磐石の上に立ち、

左足で歓喜天(象さん)を踏んで首には瓔珞をかけ、

頭の毛は逆立っています。








































作者の高村晴雲さんは、


初代高村東雲の孫として明治二十六年に生まれ、

三代目高村東雲であり、晩年は初代晴雲と名乗り

一生を仏像彫刻に専念された人物であります。




可睡斎に初めて訪れる方の中で、

東司のことやお像の存在を知らないで

お参りされる方は一様に驚きの声をあげ



掃除の行き届いたピカピカの便器や床、

しかも男女兼用といった珍しさからか

たいへん喜ばれることもあります、、、



しかし、そこは禅寺ですので

皆さまにはそこはかとなく静かに

用を足していただいております。



これだけ歴史のあるお寺のおトイレを

陰で支えてきたのは、


これまで可睡斎で修行を積んだ

たくさんの修行僧ではないでしょうか。


暑い日も寒い日も毎日黙々と

床や便器を磨きつづけ

長年、もとの美しさを保ちつつ、


行いの全てが仏様の行いである

教えそのものをまさに具体化した『行』といえます。




どうぞよろしゅう。